2025年9月更新:寝返りのバイオメカニクス①概論編



寝返りのバイオメカニクス:機能的動作の神経筋制御と評価の視点


1. 寝返りとは何か? ── 機能的役割と臨床的意義


寝返り(rolling)は、ヒトの発達運動の初期段階における重要な移動手段であり、姿勢制御の獲得・体幹と四肢の連動性の学習・左右の筋活動の分化に寄与します。成人においても、ベッド上での体位変換や、動作の起点としての寝返りは、運動学習・再教育の入口として重要です。







2. 寝返りの基本的なバイオメカニクス


2-1. 姿勢制御と重心移動


寝返りは「背臥位 → 側臥位 → 腹臥位」またはその逆の回旋動作であり、重心(CoG)の横方向への移動と回旋モーメントを用いて行われます。





  • 開始前:背臥位にて重心は支持基底面(背部全体)に広く分散




  • 回旋中:四肢や体幹の回旋により重心が身体外縁部に移動




  • 到達時:側臥位または腹臥位において安定性を再構築




2-2. 関節運動の連鎖




  • 頸部:頭部の回旋が運動のトリガー




  • 体幹:脊柱の分節的回旋(特に胸腰移行部)が重要




  • 骨盤:骨盤のローテーションと、下肢の動きとの連動性




  • 肩帯:肩甲帯と上肢の分離・協調運動が必要








3. 神経学的・感覚統合的な制御機構


3-1. 脳領域の関与




  • 前庭核:重力に対する頭部の位置感覚




  • 小脳:動作の協調性・タイミング制御




  • 一次運動野・感覚野:左右差の調整と随意運動の制御




  • 島皮質・体性感覚皮質:触覚・皮膚感覚による身体図式の更新




3-2. 感覚入力の利用




  • 体性感覚(表在・深部):皮膚刺激や関節位置覚で動作を誘導




  • 視覚・前庭覚:空間認識と重力方向の把握




  • 皮膚牽引:背部・胸部・側部の皮膚を方向付けに活用可能(例:背部皮膚を上方に牽引→脊柱伸展誘導)



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