人や猿の祖先であるネズミの仲間達も夜行性で聴覚と嗅覚の発達した動物だった。霊長類への進化の過程でほとんどのサルの仲間達は昼行性の行動をとるようになった。また、ネズミのように地上を這い回るのではなく、木の上で生活するようになった。人や猿が視覚優位になったのは、このように人や猿の祖先が、木に登り、木の上で生活したこと、樹上生活と関係あると考えられている。地上で生活していた頃に比べ、木の上での生活では生活空間が高さ方向にも広がり、3次元となる。木の枝から枝へと移動するためには正確な位置の判断を要求される。自然の中にある木の枝は、風で揺れ動き、あるいは動物の重みで揺れ動く。そこで、目で見た動きの正確な判断、将来の位置の予測が要求される。さらに生い茂った葉の間に仲間や獲物や木の実を見つけなければならない。わたしたち人類の祖先と、一部の猿の仲間はやがて再び地上におりて生活をはじめるが、視覚優位の脳はそのまま残された。人はその後音声言語を用いるようになったので、聴覚の重要度は猿よりは増していると推定されるが、それでも聴覚に関連した大脳皮質の領域は側頭葉の上部に限られており、視覚優位の特徴は保たれている。
人の仲間である霊長類はこうして視覚が良く発達した。ニホンザルと近い関係にあるアカゲザルで調べると、視覚に関連した大脳皮質の領域の総面積は、大脳新皮質全体の約55%にもなる。この面積は、聴覚関連の領域の総面積約3.4%を大きく上まわっている。ニホンザルで学習課題を教えるときも、視覚刺激を手がかりとした学習課題は比較的簡単に教えることができるが、聴覚刺激を手がかりとした学習課題を教えるのはなかなかほねがおれる。これとは逆に、ネズミを訓練するときは、聴覚の方が視覚よりも簡単である。
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